はじめに:なぜ探偵の料金は「不透明」と言われるのか
こんにちは。探偵情報メディア監修者の田中です。元警視庁刑事部捜査一課で15年間刑事として勤務し、その後大手探偵事務所で調査部門責任者を10年間務めた後、現在はこのメディアの監修をしています。
「探偵に依頼したいけれど、料金がいくらかかるのか全く見当がつかない」「見積もりをもらったが、本当に適正な価格なのか判断できない」——このような相談を、これまで数え切れないほど受けてきました。
あなたが今、配偶者の不貞を疑い、長い間連絡の取れない家族を探し、あるいはストーカー被害の証拠を掴みたいと考えているなら、きっと同じような不安を抱えていることでしょう。警察に相談したものの「民事不介入」と言われ、最後の頼みの綱として探偵への依頼を検討しているものの、その料金体系の複雑さに戸惑っているのではないでしょうか。
実際、私が刑事時代から探偵業界を見てきた中で、料金体系の不透明さは業界全体の大きな問題だと感じています。調査の性質上、事前に必要な作業量を正確に見積もることが困難なケースが多いのは事実ですが、残念ながら一部の業者がその特性を悪用し、不当に高額な料金を請求したり、後から追加費用を要求したりするケースも存在しています。
この記事では、通算3,000件以上の調査を指揮・担当した経験を基に、探偵の料金体系を完全に解説します。時間料金制、パック料金制、成功報酬制といった基本的な仕組みから、それぞれのメリット・デメリット、そして何より重要な「適正価格の見抜き方」と「悪徳業者を回避する方法」まで、この記事一本で全てが分かる内容にしました。
あなたが抱える深刻な問題を解決するための第一歩として、まずは正しい知識を身につけていただきたいと思います。
第1章:探偵料金の3つの基本体系とその特徴
1-1. 時間料金制(時間単価×調査時間)
時間料金制は、最も基本的で分かりやすい料金体系です。「調査員1名につき1時間○○円」という単価が設定されており、実際に調査にかかった時間分だけ料金を支払う仕組みです。
具体的な料金例:
- 調査員1名:1時間あたり5,000円〜15,000円
- 調査員2名体制:1時間あたり10,000円〜30,000円
- 車両・機材費:1日あたり5,000円〜20,000円
私が担当した浮気調査の事例をご紹介しましょう。40代男性のAさんから「妻の帰りが最近遅く、携帯電話を肌身離さず持つようになった。毎週金曜日に残業と言って帰宅が深夜になる」という相談を受けました。
この場合、まず金曜日の夕方から妻の勤務先で張り込みを行い、実際の行動を確認する必要がありました。調査員2名体制で午後5時から午後11時まで6時間の調査を実施した結果、妻が同僚男性と食事をした後、ホテルに入る決定的な証拠を撮影できました。
料金計算例:
- 調査員2名×6時間×8,000円(1名1時間単価)=96,000円
- 車両費:15,000円
- 報告書作成費:20,000円
- 合計:131,000円
時間料金制の最大のメリットは、料金の透明性です。事前に時間単価が明確になっているため、調査時間さえ把握できれば総額を計算できます。また、調査が予想より早く終了した場合は、その分料金も安くなります。
一方デメリットとしては、調査が長期化した場合の費用増大があります。上記の事例でも、もし1回の調査で証拠が取れず、複数回の調査が必要になれば、その分費用は嵩んでいきます。
時間料金制が向いているケース:
- 調査期間の目安が立てやすい案件
- 予算の上限を明確に設定したい場合
- 調査の進捗を細かく管理したい場合
1-2. パック料金制(調査内容一式の定額制)
パック料金制は、特定の調査内容について期間や回数を限定し、一定額で提供する料金体系です。多くの探偵事務所では「浮気調査パック」「人探しパック」といった形で設定されています。
代表的なパック料金例:
- 浮気調査3日間パック:20万円〜40万円
- 素行調査1週間パック:15万円〜35万円
- 人探し基本パック:10万円〜25万円
実際の事例として、30代女性のBさんから「夫が毎週土曜日に『ゴルフの練習』と言って出かけるが、帰宅時にゴルフクラブを持っていない。3回ほど確認してもらいたい」という依頼を受けました。
この場合、土曜日限定の3回調査パックを提案しました。パック内容は以下の通りです:
調査内容:
- 土曜日朝から夕方まで(各8時間×3回)
- 調査員2名体制
- 車両・機材一式
- 写真・動画撮影
- 詳細報告書作成
パック料金:28万円
結果として、1回目の調査で夫が別の女性とデートしている証拠を撮影でき、3回の調査予定を1回で完了することができました。しかし、パック料金制の場合、調査が早期に完了しても料金は変わりません。この点については事前にBさんに説明し、ご納得いただいた上で契約しました。
パック料金制のメリットは、料金の確定性です。追加費用の心配がなく、予算を明確に設定できます。また、調査内容が包括的にパッケージされているため、必要な作業が漏れる心配もありません。
デメリットとしては、調査が早期に完了した場合でも料金は変わらない点、逆に予定期間内で証拠が取れなかった場合の扱いが業者によって異なる点があります。
パック料金制が向いているケース:
- 調査内容が明確で、期間の目安が立つ場合
- 追加費用の心配をしたくない場合
- 調査の全体像を事前に把握したい場合
1-3. 成功報酬制(成果に応じた料金設定)
成功報酬制は、調査の成果に応じて料金を設定する体系です。一般的には「着手金(基本料金)+成功報酬」の組み合わせで設定されます。
代表的な成功報酬制の例:
- 着手金:5万円〜15万円
- 成功報酬:20万円〜50万円(調査の難易度により変動)
- 実費(交通費、宿泊費等):実際にかかった金額
成功報酬制の定義で最も重要なのは「成功」の基準です。これが曖昧だと後でトラブルになるため、契約時に明確に定義する必要があります。
私が担当した人探し調査の事例をご紹介します。50代男性のCさんから「30年前に世話になった恩師を探したい。定年退職後の住所が分からない」という依頼を受けました。
成功の定義:
- 対象者の現在の住所を特定すること
- 対象者が存命であることを確認すること
- 連絡可能な状態であることを確認すること
料金設定:
- 着手金:10万円
- 成功報酬:25万円
- 実費:実際にかかった交通費・通信費
この調査では、まず対象者の最後の勤務先から調査を開始しました。退職後の年金受給記録、住民票の移転履歴などを合法的な範囲で調査した結果、約2週間で対象者の現住所を特定することができました。
成功報酬制のメリットは、依頼者側のリスクが低いことです。成果が出なければ着手金のみの負担で済みます。探偵事務所側も成果を出すために全力で取り組むインセンティブが働きます。
デメリットとしては、成功した場合の総額が他の料金体系より高額になる可能性があること、そして「成功」の定義を巡ってトラブルになる可能性があることです。
成功報酬制が向いているケース:
- 調査の成功可能性が不透明な場合
- 初期費用を抑えたい場合
- 成果重視で依頼したい場合
第2章:料金に影響する重要な要素と相場観
2-1. 調査の種類別料金相場
探偵の料金は調査の種類によって大きく異なります。ここでは、私の実務経験を基に、主要な調査の相場をご紹介します。
浮気・不倫調査
浮気調査は探偵業務の中でも最も多い依頼の一つです。料金相場は調査の複雑さや期間によって大きく変動します。
- 基本的な行動確認(1日): 8万円〜20万円
- 証拠撮影込み(3日間): 25万円〜60万円
- 長期間の素行調査(1ヶ月): 50万円〜150万円
実際の事例として、私が担当した35代女性Dさんのケースをご紹介します。「夫が週2回、『残業』と言って帰宅が深夜になる。しかし会社に確認したところ、そのような残業記録はないと言われた」という相談でした。
この調査では、夫の行動パターンを把握するため、まず1週間の予備調査を実施しました。その結果、火曜日と金曜日に決まって別の女性と会っていることが判明。その後、決定的な証拠を撮影するため、さらに3日間の本格調査を行いました。
調査内容と料金内訳:
- 予備調査(1週間):調査員1名×週5日×各6時間=18万円
- 本格調査(3日間):調査員2名×3日×各8時間=38万円
- 車両・機材費:8万円
- 報告書・証拠写真作成:12万円
- 合計:76万円
この金額は決して安くありませんが、Dさんは後に離婚調停で有利な条件を得ることができ、「調査費用以上の価値があった」とおっしゃっていました。
人探し・家出人捜索
人探しの料金は、手がかりの有無や対象者の状況によって大きく変わります。
- 基本的な所在調査: 10万円〜30万円
- 手がかりが少ない場合: 30万円〜80万円
- 海外在住の可能性がある場合: 50万円〜200万円
60代男性Eさんからの依頼で、「40年前に別れた初恋の人の消息を知りたい」という案件を担当しました。手がかりは名前と出身地のみという困難な調査でしたが、戸籍調査、同窓会名簿の確認、SNSでの情報収集などを組み合わせ、3ヶ月かけて対象者を発見しました。
調査料金:
- 着手金:15万円
- 成功報酬:45万円
- 実費(交通費、資料取得費等):8万円
- 合計:68万円
企業信用調査・素行調査
企業や個人の信用調査は、調査の深度によって料金が変動します。
- 基本的な信用調査: 15万円〜40万円
- 詳細な財務状況調査: 40万円〜100万円
- 役員の素行調査込み: 60万円〜150万円
2-2. 調査員の人数と技術レベル
調査料金に大きく影響するのが、調査員の人数と技術レベルです。
調査員1名体制
- 時間単価:5,000円〜12,000円
- 適用場面:予備調査、室内での張り込み、聞き込み調査など
- メリット:費用を抑えられる
- デメリット:対象者を見失うリスク、証拠撮影の困難さ
調査員2名体制
- 時間単価:10,000円〜25,000円
- 適用場面:浮気調査、尾行調査、複数地点での同時調査
- メリット:確実性の向上、多角的な証拠収集
- デメリット:費用が倍増
私の経験上、浮気調査では2名体制が基本です。1名が対象者を尾行し、もう1名が証拠撮影や周囲の警戒を担当します。刑事時代の経験からも、重要な証拠を確実に押さえるためには、複数名での連携が不可欠だと実感しています。
調査員3名以上の体制
- 時間単価:15,000円〜40,000円
- 適用場面:複雑な企業調査、広範囲の捜索、高度な技術を要する調査
技術レベルによる料金差
- 新人調査員: 時間単価3,000円〜6,000円
- 経験豊富な調査員: 時間単価8,000円〜15,000円
- 元警察官・探偵業界のエキスパート: 時間単価12,000円〜20,000円
2-3. 調査期間と難易度
短期集中型調査
- 1日〜1週間の調査
- 料金:10万円〜50万円
- 特徴:高い集中力と専門技術が必要
中期調査
- 2週間〜1ヶ月の調査
- 料金:30万円〜100万円
- 特徴:対象者の行動パターンを詳細に把握
長期調査
- 1ヶ月以上の継続調査
- 料金:50万円〜300万円以上
- 特徴:複雑な人間関係や企業構造の解明
調査の難易度を決める要素:
対象者の警戒レベル
- 一般的な警戒心:標準料金
- 高い警戒心(探偵の存在を疑っている):1.5倍〜2倍
- 極めて高い警戒心(反社会的勢力関係者等):3倍〜5倍
調査環境の複雑さ
- 都市部での調査:標準料金
- 地方での調査:交通費・宿泊費が加算
- 海外での調査:5倍〜10倍
私が担当した最も困難な調査の一つは、暴力団関係者の素行調査でした。対象者は常に周囲を警戒し、複数のボディガードを従えていました。この調査では、通常の3倍の人員と特殊な機材を使用し、料金も通常の5倍近くになりました。
第3章:悪徳業者を見抜く!料金トラブル回避の鉄則
3-1. 危険な料金設定パターンの見極め方
長年この業界に携わってきた中で、残念ながら多くの悪徳業者を目にしてきました。料金に関するトラブルは、依頼者の人生に深刻な影響を与えます。ここでは、私の経験を基に、絶対に避けるべき危険な料金設定パターンをご紹介します。
パターン1:「格安」を売りにする業者
「業界最安値!浮気調査1日5万円」といった広告を見かけることがありますが、これは非常に危険です。
実際にあった事例をご紹介します。40代男性Fさんが、そのような格安業者に浮気調査を依頼しました。契約時は確かに5万円でしたが、調査開始後に次々と追加費用を請求されました。
追加費用の内訳:
- 「対象者が警戒しているため特殊機材が必要」:15万円
- 「調査範囲が広がったため車両費追加」:8万円
- 「証拠の法的有効性を高めるため専門処理」:12万円
- 「緊急事態対応費」:10万円
最終的に、当初の5万円が50万円を超える請求となり、Fさんは深刻な金銭的被害を受けました。
見極めポイント:
- 相場から大幅に安い料金設定
- 契約時の説明が曖昧
- 追加費用に関する説明がない
- 書面での契約を嫌がる
パターン2:成功報酬の定義が曖昧な業者
「成功報酬制なので安心」と謳いながら、成功の定義を明確にしない業者も危険です。
30代女性Gさんの事例では、人探し調査を成功報酬制で依頼しました。「見つからなければ着手金5万円のみ」という説明でしたが、実際には以下のような解釈トラブルが発生しました。
業者側の主張:
- 「対象者が以前住んでいた住所を特定したので成功」
- 「現在の住所は分からないが、手がかりを提供したので成功」
依頼者の理解:
- 「現在の住所と連絡先を特定すること」
この認識の違いにより、Gさんは納得できない成功報酬を請求されました。
見極めポイント:
- 成功の定義が書面で明記されていない
- 「成功」の基準が複数の解釈を許す曖昧な表現
- 成功報酬の金額設定が不透明
パターン3:調査実態のない「偽装調査」業者
最も悪質なのが、実際には調査を行わず、適当な報告書を作成する業者です。
50代男性Hさんは、妻の浮気調査を依頼しましたが、後に以下の事実が判明しました:
偽装調査の実態:
- 報告書の写真が別人(インターネットから無断転載)
- 調査日時と実際の妻の行動が矛盾
- 調査員が現場に来ていない証拠を掴む
Hさんは50万円の調査費用を支払いましたが、一切の調査が行われていませんでした。
見極めポイント:
- 調査報告が異様に早い
- 写真の品質が不自然
- 調査内容の詳細な質問に答えられない
- 探偵業届出証明書の確認を嫌がる
3-2. 適正価格を見極める3つの基準
基準1:市場相場との比較
まず、同種の調査の市場相場を把握することが重要です。私の経験から、適正価格の目安をお示しします:
浮気調査(証拠撮影込み):
- 1日(8時間)調査:8万円〜20万円
- 3日間調査:25万円〜60万円
- この範囲を大幅に下回る、または上回る場合は要注意
人探し調査:
- 基本的な所在調査:10万円〜30万円
- 手がかりが少ない困難な調査:30万円〜80万円
これらの相場から大幅に外れる場合は、その理由を詳しく確認する必要があります。
基準2:料金構成の透明性
適正な探偵事務所は、料金の内訳を明確に説明できます。
透明性の高い見積もり例:
浮気調査(3日間)見積書
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
基本調査費
調査員2名×3日×8時間×4,000円 = 192,000円
車両・機材費
車両使用料:3日×5,000円 = 15,000円
撮影機材使用料:3日×3,000円 = 9,000円
報告書作成費 = 20,000円
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
小計:236,000円
消費税:23,600円
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
合計:259,600円
この例のように、各項目が明確に分かれ、単価と数量が記載されている見積もりは信頼できます。
基準3:契約条件の明確性
適正な業者は、以下の点を書面で明確にします:
- 調査内容の詳細
- 料金の支払い条件
- 追加費用が発生する条件
- キャンセル規定
- 成功・不成功の判定基準
3-3. 契約前に必ず確認すべき10のチェックポイント
私が依頼者の方々にお伝えしている、契約前の必須確認事項をご紹介します。これらすべてに明確な回答を得られない業者との契約は避けるべきです。
チェックポイント1:探偵業届出証明書の確認
探偵業法により、探偵業を営むには都道府県公安委員会への届出が必要です。届出番号と証明書の提示を求めましょう。
確認方法:
- 事務所内での証明書の掲示確認
- 届出番号の真偽を公安委員会に照会
- ホームページ上での届出番号記載確認
チェックポイント2:調査員の資格と経験
調査を担当する調査員の経歴を確認しましょう。
確認内容:
- 探偵業界での経験年数
- 過去の調査実績(守秘義務に配慮した範囲で)
- 特殊技能や資格の有無
チェックポイント3:料金の全体像
見積もりに含まれていない費用がないか、詳細に確認しましょう。
確認項目:
- 基本料金に含まれる作業範囲
- 追加費用が発生する条件
- 実費の算定方法
- 報告書作成費の扱い
チェックポイント4:調査方法の適法性
違法な調査方法を用いる業者は避けなければなりません。
適法な調査方法:
- 公道からの張り込み・尾行
- 聞き込み調査(個人情報保護法の範囲内)
- 公開情報の収集・分析
違法な調査方法:
- 住居侵入
- 盗聴器の設置
- 個人情報の不正取得
チェックポイント5:契約解除・キャンセル規定
やむを得ない事情で契約を解除する場合の条件を確認しましょう。
確認内容:
- キャンセル料の発生条件
- 既払い金の返金規定
- 調査途中での契約解除の扱い
チェックポイント6:守秘義務の徹底
探偵業法により守秘義務が定められていますが、具体的な情報管理方法を確認しましょう。
確認項目:
- 調査資料の保管方法
- 第三者への情報漏洩防止策
- 調査終了後の資料処分方法
チェックポイント7:報告書の内容と品質
調査の成果である報告書の内容を事前に確認しましょう。
確認内容:
- 報告書のサンプル確認
- 写真・動画の品質基準
- 法的有効性への配慮
チェックポイント8:調査期間中の連絡体制
調査中の進捗報告や緊急時の連絡体制を確認しましょう。
確認項目:
- 担当者の連絡先
- 進捗報告の頻度と方法
- 緊急時の対応体制
チェックポイント9:アフターフォロー体制
調査終了後のサポート体制も重要です。
確認内容:
- 報告書に関する質問対応
- 法的手続きへの協力
- 追加調査の可能性
チェックポイント10:同業他社との比較検討
必ず複数の業者から見積もりを取り、比較検討しましょう。
比較項目:
- 料金の妥当性
- 調査内容の充実度
- 担当者の信頼性
- 会社の実績と評判
第4章:調査内容別の詳細料金分析
4-1. 浮気・不倫調査の料金構造詳解
浮気調査は探偵業務の中でも最も多い依頼で、私も数百件の案件を手がけてきました。料金は調査の複雑さや求める証拠の種類によって大きく変動します。
段階別料金構造
第1段階:行動確認調査(予備調査)
- 目的:対象者の基本的な行動パターンの把握
- 期間:3日間〜1週間
- 料金:15万円〜35万円
- 調査員:1名〜2名
実際の事例として、45代男性Iさんから「妻が週3回、習い事に行くと言っているが、実際に行っているか確認したい」という依頼を受けました。この段階では、妻が実際にどこに向かうのか、滞在時間はどの程度かを確認しました。
調査の結果、妻は確かに習い事教室に向かいましたが、滞在時間は申告の半分程度で、その後別の場所に移動していることが判明しました。
第2段階:接触相手の特定調査
- 目的:不貞相手の身元特定
- 期間:1週間〜2週間
- 料金:25万円〜50万円
- 調査員:2名〜3名
Iさんのケースでは、妻が習い事の後に向かう場所で男性と会っていることが確認できたため、その男性の身元特定調査に移行しました。車のナンバープレート、勤務先、住所などを合法的な範囲で調査しました。
第3段階:決定的証拠の撮影
- 目的:法廷で通用する不貞の証拠撮影
- 期間:1週間〜1ヶ月
- 料金:30万円〜80万円
- 調査員:2名〜3名(場合により4名)
最終段階では、妻と不貞相手がラブホテルに入る瞬間、退室する瞬間の撮影を行いました。この段階で最も重要なのは、写真の鮮明さと法的有効性です。
Iさんの調査総額:
- 第1段階:20万円
- 第2段階:35万円
- 第3段階:45万円
- 合計:100万円
この金額は決して安くありませんが、Iさんは後の離婚調停で慰謝料300万円と有利な財産分与を得ることができました。
料金に影響する特殊要因
対象者の職業による影響
- 一般会社員:標準料金
- 医師・弁護士等の専門職:1.2倍〜1.5倍(社会的地位への配慮が必要)
- 公務員:1.5倍〜2倍(高度な秘匿性が要求される)
- 芸能人・著名人:3倍〜5倍(報道リスクへの対応が必要)
調査地域による影響
- 都市部:標準料金
- 地方都市:交通費・宿泊費が追加(1.2倍〜1.5倍)
- 海外:5倍〜10倍(現地調査員の手配、通訳費用等)
時間帯による影響
- 平日昼間:標準料金
- 平日夜間・早朝:1.2倍〜1.3倍
- 土日祝日:1.3倍〜1.5倍
- 年末年始・GW・お盆:1.5倍〜2倍
4-2. 人探し・家出人捜索の料金体系
人探し調査は、手がかりの有無や対象者の状況によって調査の困難度が大きく変わるため、料金体系も複雑になります。
難易度別料金分類
レベル1:手がかり豊富な場合
- 条件:氏名、生年月日、最終住所が判明
- 期間:1週間〜2週間
- 料金:10万円〜25万円
- 成功率:85%〜95%
レベル2:一般的な捜索の場合
- 条件:氏名、おおよその年齢、出身地が判明
- 期間:2週間〜1ヶ月
- 料金:25万円〜50万円
- 成功率:60%〜80%
レベル3:困難な捜索の場合
- 条件:氏名のみ、または旧姓のみが判明
- 期間:1ヶ月〜3ヶ月
- 料金:50万円〜100万円
- 成功率:30%〜60%
レベル4:極めて困難な捜索の場合
- 条件:ニックネームのみ、外見の特徴のみ
- 期間:3ヶ月以上
- 料金:100万円以上
- 成功率:10%〜30%
実際の事例として、70代女性Jさんから「戦後の混乱期に生き別れた弟を探したい」という依頼を受けました。手がかりは弟の幼少時の名前と当時住んでいた地域のみという、極めて困難な案件でした。
調査手順と費用:
- 戦災記録・疎開記録の調査:15万円
- 同姓者の戸籍調査:25万円
- 現地聞き込み調査:20万円
- 関連人物への接触調査:30万円
- DNA鑑定による確認:10万円
総額:100万円
この調査は6ヶ月を要しましたが、最終的に弟さんを発見し、70年ぶりの再会を実現することができました。Jさんは「お金では買えない価値のある結果を得られた」と涙を流して喜ばれました。
特殊な人探し調査の料金
国際調査(海外在住者の捜索)
- 基本料金:50万円〜200万円
- 現地調査員費用:1日あたり5万円〜15万円
- 交通費・宿泊費:実費
- 通訳・翻訳費:実費
デジタル調査(SNS・インターネット調査中心)
- 基本料金:15万円〜40万円
- 特殊ソフトウェア使用料:5万円〜15万円
- 専門技術者費用:1日あたり3万円〜8万円
4-3. 企業信用調査・素行調査の料金詳細
企業や個人の信用調査は、調査の深度と範囲によって料金が大きく変動します。
企業信用調査の段階別料金
基礎調査段階
- 内容:登記情報、財務諸表、代表者情報の確認
- 期間:3日〜1週間
- 料金:10万円〜25万円
詳細調査段階
- 内容:取引先調査、銀行取引状況、業界での評判調査
- 期間:2週間〜3週間
- 料金:30万円〜60万円
総合調査段階
- 内容:役員の素行調査、隠れた債務の調査、将来性の分析
- 期間:1ヶ月〜2ヶ月
- 料金:60万円〜150万円
実際の事例として、中小企業の社長Kさんから「取引を検討している会社の信用調査をしたい。契約金額が大きいので慎重に判断したい」という依頼を受けました。
調査対象企業の概要:
- 業種:IT関連サービス業
- 従業員数:約50名
- 設立:10年前
- 契約予定金額:3,000万円
調査内容と料金:
- 基礎情報調査:15万円
- 登記情報の詳細確認
- 財務諸表の分析
- 代表者の経歴調査
- 取引実態調査:25万円
- 主要取引先への聞き込み
- 過去のトラブル有無の確認
- 支払い状況の調査
- 代表者素行調査:30万円
- 代表者の私生活調査
- 金銭管理状況の確認
- 人格面の評価
総額:70万円
調査の結果、表面上は健全に見えた企業でしたが、実際には多額の隠れた債務があり、代表者も個人的な借金を抱えていることが判明しました。Kさんはこの結果を受けて契約を見送り、後にその企業が倒産したことで「調査費用の何十倍もの損失を回避できた」と感謝されました。
個人信用調査の料金構造
基本的な身元調査
- 内容:住所、勤務先、家族構成の確認
- 期間:1週間
- 料金:15万円〜30万円
詳細な素行調査
- 内容:交友関係、金銭管理、生活態度の調査
- 期間:2週間〜3週間
- 料金:30万円〜60万円
総合的な人物調査
- 内容:過去の経歴、人格面の評価、将来性の分析
- 期間:1ヶ月
- 料金:50万円〜100万円
第5章:賢い探偵選びのための料金比較術
5-1. 複数見積もりの効果的な取り方
探偵選びで最も重要なのは、複数の業者から見積もりを取り、適切に比較することです。しかし、単純に料金の安さだけで選ぶのは危険です。私の経験から、効果的な見積もり比較の方法をお教えします。
見積もり依頼時の重要ポイント
まず、すべての業者に対して同じ条件で見積もりを依頼することが重要です。条件が異なれば、料金の比較ができません。
統一すべき条件:
- 調査の目的と期待する成果
- 調査対象者の基本情報
- 調査期間の希望
- 予算の上限
- 調査地域
- 報告書の形式
実際の事例として、35代女性Lさんが浮気調査を検討した際の見積もり比較をご紹介します。
Lさんの依頼条件:
- 夫の浮気調査
- 毎週金曜日の行動確認(4回分)
- 証拠写真が必要
- 予算上限:50万円
- 調査地域:都内
A社の見積もり:
浮気調査(4回分)見積書
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基本調査費:調査員2名×4日×8時間×6,000円 = 384,000円
車両費:4日×8,000円 = 32,000円
機材費:4日×5,000円 = 20,000円
報告書作成費 = 30,000円
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
合計:466,000円(税込み)
B社の見積もり:
浮気調査パック料金
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
金曜日調査4回パック = 280,000円
(調査員2名、車両、機材、報告書込み)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
合計:308,000円(税込み)
C社の見積もり:
浮気調査(成功報酬制)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
着手金 = 100,000円
成功報酬(証拠撮影成功時) = 300,000円
実費(車両・機材等) = 50,000円
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
合計:450,000円(成功時)
着手金のみ:100,000円(不成功時)
一見すると、B社が最も安く見えますが、詳細を比較すると以下の違いがありました:
A社の特徴:
- 料金は最も高いが、内訳が明確
- 調査時間の保証あり
- 追加費用は一切なし
B社の特徴:
- パック料金で分かりやすい
- ただし、調査時間が短い(各日6時間)
- 証拠が取れなかった場合の再調査は別料金
C社の特徴:
- 成功報酬制でリスクが低い
- ただし、成功の定義が曖昧
- 実費の計算方法が不透明
見積もり比較の着眼点
1. 総額での比較だけでなく、時間単価での比較
- A社:6,000円/時間(調査員1名あたり)
- B社:5,833円/時間(実質的な単価)
- C社:成功報酬制のため単価比較困難
2. 含まれるサービスの範囲
- 調査員の人数と経験
- 使用する機材の品質
- 報告書の詳細度
- アフターフォローの有無
3. 追加費用の可能性
- どのような場合に追加費用が発生するか
- 追加費用の算定方法
- 追加費用の上限設定
5-2. 料金以外の重要な判断基準
料金だけでなく、以下の要素も総合的に判断することが重要です。
調査員の質と経験
私の経験上、調査員の質は調査の成否を大きく左右します。料金が安くても、経験の浅い調査員では期待する結果が得られない可能性があります。
確認すべきポイント:
- 調査員の経験年数
- 過去の成功実績
- 専門的な訓練の有無
- 元警察官等の特殊な経歴
機材と技術力
現代の探偵調査では、高品質な機材が不可欠です。
重要な機材:
- 高性能カメラ(望遠・夜間撮影対応)
- GPS追跡装置(合法的な使用範囲で)
- 通信機器
- 車両(目立たない複数台の保有)
法的知識と遵法意識
探偵業法や個人情報保護法を正しく理解し、合法的な調査を行う業者を選ぶことが重要です。
確認方法:
- 探偵業届出証明書の確認
- 違法調査の拒否姿勢
- 個人情報保護への取り組み
- 過去の法的トラブルの有無
5-3. 契約時の料金交渉術
適正な範囲での料金交渉は可能ですが、過度な値引き交渉は調査の質の低下を招く可能性があります。
効果的な交渉方法
1. 複数見積もりを活用した交渉 他社の見積もりを提示することで、料金交渉の材料にできます。ただし、単純な価格競争ではなく、サービス内容の改善を求めるアプローチが効果的です。
2. 調査内容の調整による費用削減
- 調査員の人数を調整
- 調査時間の短縮
- 調査日数の変更
- 報告書の簡素化
3. 支払い条件の交渉
- 分割払いの相談
- 成功報酬比率の調整
- 前払い条件の緩和
注意すべき交渉
避けるべき交渉:
- 相場から大幅に外れた値引き要求
- 違法な調査方法の要求
- 契約後の一方的な条件変更
私の経験では、適正な料金で質の高いサービスを提供する業者ほど、無理な値引きには応じません。逆に、簡単に大幅な値引きに応じる業者は、何らかの問題を抱えている可能性があります。
第6章:料金支払いの安全な方法と注意点
6-1. 支払い方法の種類と安全性
探偵調査の料金支払いには、いくつかの方法があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自分の状況に適した方法を選ぶことが重要です。
一括前払い
メリット:
- 手続きが簡単
- 調査中に追加の支払い手続きが不要
- 業者によっては割引が適用される場合がある
デメリット:
- 高額な費用を一度に支払う負担
- 調査が中途で終了した場合の返金問題
- 悪徳業者に騙されるリスク
実際の事例として、60代男性Mさんが人探し調査で50万円を一括前払いしたところ、業者が途中で連絡を絶ち、調査も中断されるというトラブルが発生しました。Mさんは消費者センターに相談しましたが、業者の所在が不明となり、返金を受けることができませんでした。
分割払い
メリット:
- 月々の負担を軽減できる
- 調査の進捗に応じて支払いを調整できる
- 問題が発生した場合の損失を最小限に抑えられる
デメリット:
- 分割手数料がかかる場合がある
- 支払い管理が複雑
- 総額が高くなる可能性
段階的支払い(推奨)
私が最も推奨するのは、調査の進捗に応じた段階的支払いです。
典型的な段階的支払い例:
- 契約時:総額の30%
- 調査開始時:総額の30%
- 調査完了時:総額の40%
この方法により、依頼者は調査の進捗を確認しながら支払いを行え、業者側も安定した資金で調査を実施できます。
成功報酬制の支払い
成功報酬制の場合、以下の点に注意が必要です。
支払いパターン:
- 着手金:調査開始時に支払い
- 成功報酬:成果の確認後に支払い
- 実費:調査終了後に精算
重要なポイント:
- 成功の定義を明確にする
- 部分的成功の場合の取り扱い
- 実費の上限設定
6-2. 追加費用トラブルの回避方法
追加費用を巡るトラブルは、探偵業界で最も多い問題の一つです。これを回避するための方法をお教えします。
事前の費用確認リスト
契約前に、以下の項目について必ず確認しましょう。
基本料金に含まれる項目:
- 調査員の人件費
- 基本的な機材使用料
- 通常の交通費
- 基本的な報告書作成費
追加費用が発生する可能性がある項目:
- 遠方への移動が必要な場合の交通費
- 宿泊が必要な場合の宿泊費
- 特殊機材の使用料
- 緊急時の延長調査費
- 詳細な報告書作成費
実際の事例として、40代女性Nさんが浮気調査を依頼した際、当初の見積もりは30万円でしたが、最終的に以下の追加費用を請求されました:
追加費用の内訳:
- 「対象者が警戒しているため特殊な尾行が必要」:15万円
- 「証拠撮影のため高性能カメラが必要」:8万円
- 「急な残業のため調査時間延長」:12万円
- 「詳細な報告書作成」:5万円
総額:70万円(当初見積もりの2.3倍)
このような事態を避けるため、契約時に以下の点を明確にしておくことが重要です。
契約書に明記すべき事項:
- 追加費用が発生する具体的な条件
- 追加費用の事前承認制度
- 追加費用の上限設定
- 調査内容変更時の取り扱い
6-3. 返金・キャンセル規定の重要性
調査開始後にやむを得ずキャンセルが必要になる場合があります。適切な返金・キャンセル規定を確認しておくことが重要です。
適正なキャンセル規定の例
調査開始前のキャンセル:
- 契約から7日以内:全額返金
- 契約から8日以上:事務手数料(5万円)を除いて返金
調査開始後のキャンセル:
- 実施済み調査費用を精算
- 未実施分は全額返金
- キャンセル手数料:未実施分の10%
調査が不成功の場合:
- 着手金:返金なし
- 成功報酬:支払い不要
- 実費:実際にかかった分のみ精算
注意すべき不適切な規定
以下のような規定がある業者は避けるべきです:
不適切な規定例:
- 「いかなる理由があっても返金しない」
- 「調査開始後のキャンセルは全額請求」
- 「成功・不成功に関わらず全額請求」
私が相談を受けた50代男性Oさんの事例では、家庭の事情で調査を中止する必要が生じましたが、業者から「契約書に返金しないと書いてある」と言われ、30万円の返金を拒否されました。
しかし、探偵業法では不当な契約条項は無効とされており、消費者センターとの交渉の結果、実施済み分を除いて返金を受けることができました。
第7章:法的観点から見た探偵料金の適正性
7-1. 探偵業法による料金規制
探偵業は探偵業法によって規制されており、料金に関しても一定の制約があります。法的な観点から、適正な料金の基準を解説します。
探偵業法第7条(重要事項の説明等)
探偵業者は、契約を締結しようとするときは、あらかじめ以下の事項を記載した書面を交付して説明しなければなりません:
- 探偵業者の氏名または名称、住所、探偵業届出証明書番号
- 調査内容、調査方法、調査期間、調査料金
- 調査結果の報告方法
- 契約の解除に関する事項
この法律により、料金の事前明示が義務付けられています。口約束だけで調査を開始する業者は法律違反です。
探偵業法第8条(書面の交付)
契約を締結したときは、以下の事項を記載した書面を依頼者に交付しなければなりません:
- 契約年月日
- 調査内容、方法、期間
- 調査料金、支払い方法
- 契約解除に関する事項
私が刑事時代に探偵業法違反で摘発した事例では、料金の事前説明なしに調査を開始し、後から高額な請求を行った業者がいました。このような行為は明確な法律違反です。
適正な料金設定の法的基準
探偵業法では具体的な料金水準は定められていませんが、以下の原則があります:
公序良俗に反しない料金
- 社会通念上妥当な範囲内の料金
- 他業種の専門サービスと比較して著しく高額でない
- 依頼者の支払い能力を著しく超えない
説明義務の履行
- 料金の計算根拠を明確に説明
- 追加費用の可能性を事前に説明
- 支払い条件を明確に提示
7-2. 消費者契約法による保護
探偵との契約は消費者契約法の適用を受けるため、不当な契約条項は無効となります。
無効となる契約条項の例
1. 事業者の損害賠償責任を免除する条項 「調査の結果、いかなる損害が生じても一切責任を負わない」といった条項は無効です。
2. 消費者の利益を一方的に害する条項 「調査開始後は理由の如何を問わず返金しない」といった条項は無効となる可能性があります。
3. 平均的な損害を超える違約金条項 不当に高額なキャンセル料を設定することはできません。
実際の事例として、私が相談を受けた案件で、業者が「調査が失敗しても全額請求する」という契約条項を主張していましたが、消費者契約法に基づいてこの条項は無効であることを説明し、適正な返金を受けることができました。
7-3. 料金トラブル時の法的対処法
料金を巡るトラブルが発生した場合の対処法をご説明します。
段階的な対処方法
第1段階:直接交渉 まずは業者と直接交渉を試みます。多くの場合、法的根拠を示すことで解決できます。
必要な準備:
- 契約書面の確認
- 支払い記録の整理
- 問題点の明確化
第2段階:消費者センターへの相談 直接交渉で解決しない場合は、消費者センターに相談します。
消費者センターの利点:
- 無料で相談できる
- 専門的なアドバイスを受けられる
- 業者への連絡・調整を代行してもらえる
第3段階:法的手続き それでも解決しない場合は、法的手続きを検討します。
選択肢:
- 民事調停
- 少額訴訟
- 通常の民事訴訟
私の経験では、適切な法的根拠を示すことで、多くのトラブルは第1段階または第2段階で解決できます。
証拠保全の重要性
料金トラブルに備えて、以下の書類は必ず保管しておきましょう:
- 契約書面
- 見積書
- 領収書・振込証明書
- 業者との連絡記録(メール、録音等)
- 調査報告書
第8章:実際の料金事例から学ぶ適正価格の見極め方
8-1. 成功事例:適正価格で質の高いサービスを受けた例
私がこれまで扱った案件の中から、適正な料金で満足のいく結果を得られた事例をご紹介します。これらの事例から、良質な探偵事務所の見極め方を学んでいただけると思います。
事例1:浮気調査での成功例
依頼者: 38歳女性(会社員) 相談内容: 夫の浮気疑惑。出張が増え、帰宅時間も不規則になった。携帯電話を肌身離さず持つようになり、お風呂にも持参するようになった。
調査内容: この案件では、まず夫の行動パターンを把握するため、1週間の予備調査を提案しました。その結果を踏まえて、本格的な証拠収集調査に移行する段階的なアプローチを取りました。
第1段階:行動パターン調査(1週間)
- 調査員1名による基本的な尾行・張り込み
- 平日5日間、各日6時間の調査
- 料金:18万円(調査員費用15万円+車両費3万円)
この段階で、夫が「出張」と称する日に実際は都内に留まり、特定の女性と会っていることが判明しました。
第2段階:証拠撮影調査(3日間)
- 調査員2名による本格的な証拠収集
- 決定的瞬間の撮影を目的とした集中調査
- 料金:25万円(調査員費用20万円+機材費5万円)
3日間の調査で、夫と不倫相手がラブホテルに出入りする決定的な証拠写真を撮影できました。
調査報告書作成: 8万円
総額:51万円
依頼者の感想: 「最初は50万円を超える費用に躊躇しましたが、段階的に調査を進めてくれたおかげで、無駄な費用をかけずに確実な証拠を得ることができました。離婚調停では、この証拠のおかげで慰謝料500万円と親権を獲得できました。調査費用の10倍以上の価値があったと思います」
この事例の成功ポイント:
- 段階的な調査プランにより、無駄な費用を削減
- 事前の詳細な説明で、追加費用が一切発生しなかった
- 法的に有効な証拠の撮影に成功
- 調査結果が依頼者の人生に大きなプラス効果をもたらした
事例2:人探し調査での成功例
依頼者: 65歳男性(元教師) 相談内容: 30年前に担任していた教え子の現在の連絡先を知りたい。教え子が難病に罹患し、最後に会いたいと家族から連絡があった。
調査の困難点:
- 30年という長期間の経過
- 結婚により姓が変わっている可能性
- 転居を繰り返している可能性
調査内容:
第1段階:基礎情報収集(1週間)
- 当時の学校記録の確認
- 同窓会名簿の調査
- 同級生への聞き込み
- 料金:12万円
第2段階:所在確認調査(2週間)
- 住民票移転履歴の追跡(合法的範囲内)
- 就職先の調査
- 結婚相手の特定
- 料金:20万円
第3段階:現住所特定・連絡調整(1週間)
- 現住所の特定
- 本人への連絡可能性の確認
- 家族への事情説明と連絡調整
- 料金:8万円
総額:40万円
調査結果: 3週間の調査により、教え子の現住所を特定し、本人及び家族と連絡を取ることに成功しました。教え子は確かに難病と闘っていましたが、恩師との再会を心から喜び、最後の時間を有意義に過ごすことができました。
依頼者の感想: 「30年も経っているから無理かもしれないと思っていましたが、本当に見つけてくださって奇跡のようでした。お金では買えない、人生最後の大切な時間を教え子と過ごすことができました。40万円という費用は決して安くありませんが、それ以上の価値がありました」
この事例の成功ポイント:
- 困難な調査にも関わらず、現実的な料金設定
- 段階的なアプローチによる効率的な調査
- 人道的な配慮を込めた丁寧な連絡調整
- 依頼者と対象者双方にとって意義のある結果
8-2. 失敗事例:不適切な料金設定による被害例
一方で、不適切な料金設定により被害を受けた事例もご紹介します。これらの事例から、避けるべき業者の特徴を学んでください。
事例3:悪徳業者による被害例
被害者: 42歳男性(自営業) 相談内容: 妻の浮気調査を「格安」を謳う業者に依頼したが、最終的に高額な費用を請求された。
経緯:
契約時の説明:
- 「業界最安値!浮気調査3日間で8万円」
- 「追加費用は一切不要」
- 「成功率98%の実績」
実際の請求内容:
浮気調査費用請求書
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
基本調査費 = 80,000円
特別警戒対応費(妻が警戒していたため) = 150,000円
高性能機材使用料(証拠撮影のため) = 80,000円
緊急時延長調査費(予定時間を超過) = 120,000円
専門分析費(行動パターン分析) = 60,000円
法的有効性確認費(証拠の法的価値確認) = 40,000円
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
合計:530,000円
問題点の分析:
- 「格安」の罠 当初の8万円は単なる「基本料金」で、実際の調査に必要な費用は全て「追加費用」として請求されました。
- 曖昧な契約条項 「特別警戒対応」「緊急時延長」などの定義が曖昧で、業者の判断により一方的に適用されました。
- 調査実態の疑問 提出された報告書の写真は不鮮明で、実際に調査が行われたか疑わしい内容でした。
- 法的根拠の欠如 追加費用の根拠となる法的説明がなく、単に業者の都合による一方的な請求でした。
被害者の証言: 「最初は『8万円なら試してみよう』と軽い気持ちで契約しました。しかし、調査開始後に次々と追加費用を要求され、断ると『今やめたら調査が無駄になる』と脅されました。最終的に53万円も支払いましたが、証拠らしい証拠は得られませんでした」
この事例から学ぶべき教訓:
- 相場から大幅に安い料金には必ず裏がある
- 追加費用の定義が曖昧な契約は危険
- 契約書面の詳細確認が不可欠
- 探偵業届出証明書の確認を怠ってはいけない
事例4:成功報酬制の落とし穴
被害者: 55歳女性(パート勤務) 相談内容: 家出した息子の捜索を成功報酬制の業者に依頼したが、成功の定義を巡ってトラブルが発生。
契約時の説明:
- 着手金:10万円
- 成功報酬:30万円
- 「見つからなければ着手金のみで安心」
実際の経緯:
業者は2週間の調査後、以下の報告をしました:
- 息子がアルバイトをしていた可能性のある店舗を特定
- 息子の友人数名の連絡先を調査
- 息子が利用していた可能性のあるネットカフェを発見
しかし、息子の現在の居場所は特定できませんでした。
トラブルの発生:
業者は「息子に関する重要な手がかりを複数発見したので調査は成功」として、成功報酬30万円を請求しました。
依頼者の主張: 「成功とは息子の居場所を見つけることだと理解していた」
業者の主張: 「契約書には『息子に関する有力な情報の収集』と記載されており、これは達成された」
解決までの経緯:
この案件では、消費者センターの仲裁により以下のような解決となりました:
- 成功報酬は15万円に減額
- 業者は今後の成功定義をより明確にすることを約束
- 依頼者は追加調査を他社に依頼する権利を保持
この事例から学ぶべき教訓:
- 成功報酬制では「成功」の定義を書面で明確にする
- 部分的成功の場合の取り扱いを事前に決める
- 曖昧な表現の契約書には署名しない
- 成功報酬の減額交渉の余地を残しておく
8-3. 料金相場から見る適正価格の判断基準
これまでの事例を踏まえ、適正価格を判断するための具体的な基準をまとめます。
浮気調査の適正価格基準
調査員1名・1時間あたり:5,000円〜8,000円
- これ以下:調査員の質や調査実態に疑問
- これ以上:特殊技能や高い成功率の裏付けが必要
3日間の標準的な浮気調査:25万円〜45万円
- 調査員2名体制
- 各日8時間程度
- 車両・機材費込み
- 報告書作成費込み
人探し調査の適正価格基準
基本的な所在調査:15万円〜30万円
- 手がかりが比較的多い場合
- 調査期間2〜3週間
- 成功率70%以上
困難な所在調査:30万円〜60万円
- 手がかりが少ない場合
- 調査期間1〜2ヶ月
- 成功率40〜70%
企業・個人信用調査の適正価格基準
基礎的な信用調査:15万円〜30万円
- 登記情報、財務状況の確認
- 基本的な取引先調査
- 調査期間1〜2週間
詳細な信用調査:40万円〜80万円
- 代表者の素行調査込み
- 詳細な財務分析
- 将来性の評価
適正価格を見極めるチェックリスト
以下のチェックリストを活用して、料金の適正性を判断してください:
□ 料金が市場相場の範囲内である □ 料金の内訳が明確に説明されている □ 追加費用の発生条件が明記されている □ 成功・不成功の定義が明確である □ 支払い条件が合理的である □ 返金・キャンセル規定が適切である □ 探偵業届出証明書が確認できる □ 調査方法が合法的である □ 担当者の説明が専門的で信頼できる □ 過去の実績が確認できる
これらの項目のうち、8項目以上にチェックが付く業者であれば、適正な料金設定をしている可能性が高いと判断できます。
第9章:探偵料金を安く抑える合法的な方法
9-1. 調査期間の最適化による費用削減
探偵調査の費用を抑える最も効果的な方法の一つは、調査期間を最適化することです。私の経験から、無駄な調査を避け、効率的に証拠を収集する方法をお教えします。
事前情報の整理による効率化
調査を依頼する前に、自分で収集できる情報を整理しておくことで、調査期間を大幅に短縮できます。
浮気調査の場合の事前準備:
- 怪しい行動の曜日・時間帯の記録
- 携帯電話の着信履歴(可能な範囲で)
- クレジットカードの利用明細
- 行動パターンの変化の記録
- 外見の変化(服装、香水など)
実際の事例として、45歳女性Pさんが夫の浮気調査を依頼した際、事前に以下の情報を整理していました:
Pさんが収集した情報:
- 毎週火曜日と金曜日に帰宅が遅い
- その日は必ず新しいシャツを着て出勤
- 車の走行距離が異常に増えている
- 特定の番号からの着信を避けている
この事前情報により、調査を火曜日と金曜日に限定でき、本来であれば2週間必要だった調査を4日間(2回×2日)で完了することができました。
調査費用の比較:
- 通常の2週間調査:約60万円
- 効率化後の4日間調査:約22万円
- 削減効果:38万円
人探し調査の場合の事前準備:
- 対象者の最後の確実な情報
- 関係者の連絡先リスト
- 過去の住所履歴
- 趣味や特技の情報
- 可能性のある居住地域
調査の段階的実施
一度に大規模な調査を行うのではなく、段階的に調査を実施することで、無駄な費用を削減できます。
第1段階:予備調査(1〜3日)
- 対象者の基本的な行動確認
- 調査の実現可能性の評価
- 本格調査の戦略立案
第2段階:本格調査(必要最小限の期間)
- 予備調査の結果を基にした集中的な証拠収集
- 効率的な人員配置
- 無駄のない調査計画
この方法により、多くの案件で30〜50%の費用削減を実現しています。
9-2. 調査内容の選択的実施
すべての調査を同じレベルで実施する必要はありません。目的に応じて調査内容を選択することで、費用を大幅に抑えることができます。
浮気調査における選択的実施
レベル1:行動確認のみ(費用:10万円〜20万円)
- 対象者が本当に浮気をしているかの確認
- 証拠撮影は行わない
- 離婚を前提としない場合に適している
レベル2:基本的な証拠収集(費用:20万円〜40万円)
- 浮気相手との接触の証拠
- 基本的な写真撮影
- 話し合いでの解決を目指す場合に適している
レベル3:完全な証拠収集(費用:40万円〜80万円)
- 法廷で通用する決定的証拠
- 高品質な写真・動画撮影
- 離婚・慰謝料請求を前提とする場合に必要
実際の事例として、35歳男性Qさんは当初レベル3の完全調査(見積もり75万円)を希望していましたが、相談の結果、まずレベル1の行動確認(18万円)から開始しました。
結果: レベル1の調査で妻に浮気の事実がないことが判明し、Qさんの不安が解消されました。もし最初から完全調査を実施していれば、57万円の無駄な出費となるところでした。
人探し調査における選択的実施
基本コース:所在地の特定のみ(費用:15万円〜30万円)
- 現在の住所の確認
- 生存確認
- 連絡先の特定は含まない
標準コース:連絡可能性の確認込み(費用:25万円〜45万円)
- 所在地の特定
- 本人への連絡可能性の調査
- 家族構成の確認
完全コース:詳細情報の収集(費用:40万円〜80万円)
- 所在地・連絡先の特定
- 現在の職業・生活状況
- 本人への連絡調整
9-3. 調査員数の最適化
調査員の人数を適切に設定することで、費用対効果を最大化できます。
1名体制が適している調査
- 予備調査・情報収集
- 室内での張り込み
- 聞き込み調査
- 時間単価:5,000円〜8,000円
2名体制が必要な調査
- 浮気の証拠撮影
- 尾行調査
- 複数地点での同時調査
- 時間単価:10,000円〜16,000円
3名以上が必要な調査
- 高度な警戒が予想される調査
- 広範囲での捜索調査
- 複雑な企業調査
- 時間単価:15,000円〜24,000円
実際の浮気調査の事例で、当初2名体制(時間単価12,000円)を提案された案件で、調査内容を検討した結果、予備調査段階では1名体制(時間単価6,000円)で十分と判断し、本格調査時のみ2名体制とすることで、全体の費用を40%削減しました。
9-4. 支払い方法の工夫による負担軽減
調査費用の支払い方法を工夫することで、一時的な負担を軽減できます。
分割払いの活用
多くの探偵事務所では分割払いに対応しています。ただし、分割手数料がかかる場合があるため、事前に確認が必要です。
分割払いの例:
- 調査費用:50万円
- 分割回数:10回
- 月々の支払い:5万円
- 分割手数料:3%(1.5万円)
- 総額:51.5万円
段階的支払いの活用
調査の進捗に応じて支払いを行う方法です。
段階的支払いの例:
- 契約時:20万円(40%)
- 調査開始時:15万円(30%)
- 調査完了時:15万円(30%)
この方法により、調査が中断された場合のリスクを軽減できます。
成功報酬制の活用
成功の定義を明確にした上で、成功報酬制を活用することで初期費用を抑えられます。
成功報酬制の例:
- 着手金:10万円
- 成功報酬:30万円
- 不成功時の負担:10万円のみ
9-5. 自力調査との併用
探偵への依頼と並行して、自分でできる調査を行うことで、全体の費用を削減できます。
自力でできる調査
情報収集:
- インターネット検索
- SNSでの情報収集
- 公的記録の確認
- 関係者への聞き込み
基本的な行動確認:
- 対象者の行動パターンの記録
- 外出時間・帰宅時間の記録
- 交友関係の変化の観察
注意点:
- 違法行為は絶対に行わない
- プライバシー侵害に注意
- 安全面に十分配慮する
- 証拠能力のある記録を残す
実際の事例として、40歳女性Rさんは夫の浮気調査で、自分で基本的な行動記録を1ヶ月間取り続けました。その記録を基に探偵に依頼したところ、通常なら1週間かかる行動パターンの把握が不要となり、2日間で決定的証拠を撮影することができました。
費用比較:
- 通常の調査:45万円
- 併用後の調査:18万円
- 削減効果:27万円
第10章:トラブル回避のための契約時チェックポイント
10-1. 契約書面の必須確認事項
探偵との契約では、後のトラブルを避けるために契約書面の内容を詳細に確認することが不可欠です。私の経験から、特に重要なチェックポイントをご説明します。
基本情報の確認
契約書面には以下の情報が明記されている必要があります:
探偵業者の情報:
- 正式な事業者名
- 代表者名
- 事業所の住所
- 探偵業届出証明書番号
- 連絡先(電話番号・メールアドレス)
依頼者の情報:
- 氏名
- 住所
- 連絡先
- 身分証明書の確認記録
実際にあったトラブル事例として、契約書に記載された事業所住所が架空のものだった事案があります。50歳男性Sさんが人探し調査を依頼した業者の事業所を訪問したところ、そのような事務所は存在せず、連絡も取れなくなったというケースです。
調査内容の詳細記載
契約書には、調査内容が具体的に記載されている必要があります。
必須記載事項:
- 調査の目的
- 調査対象者の情報
- 調査方法(合法的な範囲内で)
- 調査期間
- 調査地域
- 調査員の人数
曖昧な記載の例(危険):
- 「必要に応じて調査を実施する」
- 「適切な方法で証拠を収集する」
- 「十分な期間をかけて調査する」
具体的な記載の例(適切):
- 「対象者の平日夕方の行動確認を目的として実施する」
- 「公道からの尾行・張り込みにより証拠写真を撮影する」
- 「令和○年○月○日から○日まで、合計○日間実施する」
10-2. 料金関連の重要確認項目
料金に関する記載は、最もトラブルが発生しやすい部分です。以下の項目を必ず確認してください。
基本料金の内訳
料金の構成要素が明確に分かれていることを確認します。
標準的な料金内訳:
浮気調査料金内訳
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
調査員費用
調査員2名×3日×8時間×5,000円 = 240,000円
車両使用料
3日×8,000円 = 24,000円
機材使用料
撮影機材・通信機器等 = 15,000円
報告書作成費 = 20,000円
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
小計:299,000円
消費税:29,900円
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
合計:328,900円
追加費用の条件
追加費用が発生する条件と金額を明確にしておくことが重要です。
明記すべき内容:
- どのような場合に追加費用が発生するか
- 追加費用の算定方法
- 追加費用の事前承認が必要かどうか
- 追加費用の上限設定
適切な追加費用条項の例: 「調査対象者が調査予定地域外(都外)に移動した場合、事前に依頼者の承認を得た上で、追加の交通費・宿泊費(実費)を請求する。ただし、1日あたりの追加費用は3万円を上限とする」
不適切な追加費用条項の例: 「調査の過程で必要と判断した場合、追加費用を請求することがある」
支払い条件
支払いの時期、方法、条件を明確にします。
確認事項:
- 支払い時期(前払い・後払い・分割払いの別)
- 支払い方法(現金・振込・クレジットカードなど)
- 分割払いの場合の手数料
- 領収書の発行
10-3. キャンセル・返金規定の確認
調査開始後にやむを得ずキャンセルが必要になる場合に備え、返金規定を確認しておくことが重要です。
適正な返金規定の例
調査開始前のキャンセル:
- 契約から7日以内:全額返金(クーリングオフ)
- 契約から8日以降:事務手数料を除いて返金
調査開始後のキャンセル:
- 実施済み分の調査費用は請求
- 未実施分は全額返金
- キャンセル手数料:未実施分の10%以内
調査が不成功の場合:
- 着手金:返金しない
- 成功報酬:支払い不要
- 実費:実際にかかった分のみ請求
実際の事例として、60歳女性Tさんが家出した息子の捜索を依頼していましたが、息子が自ら帰宅したため調査をキャンセルすることになりました。適切な返金規定があったため、未実施分の15万円が返金され、実質的な負担は5万円で済みました。
不適切な返金規定の例
以下のような規定がある業者は避けるべきです:
- 「いかなる理由があっても返金しない」
- 「調査開始後は全額請求する」
- 「キャンセル料として全額を請求する」
10-4. 守秘義務と情報管理
探偵調査では、依頼者や調査対象者の個人情報を扱うため、守秘義務と情報管理について確認が必要です。
守秘義務に関する確認事項
法的な守秘義務: 探偵業法第10条により、探偵業者には法的な守秘義務が課せられています。
契約書での明記事項:
- 調査で得た情報の第三者への漏洩禁止
- 調査終了後の情報の取り扱い
- 情報の保管期間と処分方法
- 情報漏洩があった場合の損害賠償
情報管理体制の確認
確認すべき内容:
- 調査資料の保管方法(物理的・電子的セキュリティ)
- アクセス権限の管理
- 情報の複製・持ち出し防止策
- サイバーセキュリティ対策
実際の事例として、企業の信用調査を依頼した案件で、調査報告書が第三者に漏洩し、企業の信用に大きな損害を与えたケースがありました。この事例では、探偵事務所の情報管理体制が不十分だったことが原因でした。
10-5. 調査方法の合法性確認
依頼する調査が法的に問題ないかを確認することは、依頼者自身を法的リスクから守るために重要です。
合法的な調査方法
許可される調査:
- 公道からの張り込み・尾行
- 公開情報の収集・分析
- 聞き込み調査(適切な範囲内)
- 合法的な写真・動画撮影
違法な調査方法
禁止される行為:
- 住居侵入
- 盗聴器・GPS装置の無断設置
- 個人情報の不正取得
- ストーカー行為
- 恐喝・脅迫
契約時に、調査方法が合法的な範囲内であることを確認し、違法な手段は絶対に使用しないことを書面で約束してもらうことが重要です。
実際に私が相談を受けた事例で、探偵が対象者の携帯電話に盗聴アプリをインストールしたため、依頼者も共犯として法的責任を問われそうになったケースがありました。このような事態を避けるためにも、調査方法の合法性確認は必須です。
合法性確認のチェックリスト
以下の項目を契約前に確認してください:
□ 住居侵入を伴う調査は行わない □ 盗聴・盗撮機器の設置は行わない □ 個人情報の不正取得は行わない □ ストーカー行為に該当する調査は行わない □ 調査対象者の人権を尊重する □ プライバシー侵害に配慮する □ 法的に問題のある手段は使用しない □ 調査の過程で違法行為が判明した場合の対応方法が明確
これらすべてにチェックが付く業者であれば、合法的な調査を行う可能性が高いと判断できます。
おわりに:真実を知る勇気と、新たな一歩への道筋
長い記事をここまでお読みいただき、ありがとうございました。探偵の料金体系について、私の経験に基づく詳細な情報をお伝えしてきました。
あなたが今、深刻な問題を抱え、真実を知ることへの不安と恐怖の中で立ち止まっていることを、私は深く理解しています。配偶者の不貞を疑う気持ち、長年連絡の取れない大切な人への想い、あるいは自分や家族の安全を脅かす問題への対処——これらはどれも、一人で抱えるには重すぎる悩みです。
刑事として15年、探偵として10年の経験を通じて、私は数多くの依頼者の方々と出会ってきました。その中で学んだことは、「真実を知ることは時として辛いが、それは新たな人生を歩むための不可欠な第一歩である」ということです。
探偵の料金は決して安いものではありません。しかし、適正な料金で信頼できる業者に依頼することで得られる結果は、多くの場合、その費用を上回る価値をもたらします。重要なのは、この記事でお伝えした知識を活用して、賢明な判断をすることです。
あなたの次の一歩のために
もしあなたが探偵への依頼を真剣に考えているなら、以下のステップを踏むことをお勧めします:
- まずは複数の業者に相談してみてください 多くの探偵事務所では無料相談を実施しています。この記事で学んだ知識を活用して、信頼できる業者を見極めてください。
- 見積もりを比較検討してください 料金だけでなく、調査内容、業者の信頼性、担当者との相性も総合的に判断してください。
- 契約前には必ず書面を確認してください 口約束ではなく、すべての条件が書面で明記されていることを確認してください。
- 小さな一歩から始めてください いきなり大規模な調査ではなく、段階的なアプローチから始めることで、リスクを最小限に抑えられます。
最後に
真実を知ることは勇気のいることです。しかし、その先には必ず新しい道が開けています。私がこれまで担当した依頼者の方々の多くが、調査結果を受けて「辛かったが、知ることができて良かった」「これで前に進むことができる」とおっしゃいました。
あなたの抱える問題が一日も早く解決し、平穏な日々を取り戻すことができるよう、心から願っています。この記事が、そのための一助となれば幸いです。
どんなに困難な状況にあっても、あなたは一人ではありません。適切な専門家の力を借りることで、必ず道は開けます。真実を知る勇気を持って、新たな一歩を踏み出してください。
監修者プロフィール 田中康夫 元警視庁刑事部捜査一課刑事(15年勤務) 大手探偵事務所調査部門責任者(10年勤務) 現在:探偵情報メディア監修者 保有資格:探偵業届出証明、第一級調査指導技能士 調査実績:浮気・不倫調査、人探し・家出人調査、企業信用調査など通算3,000件以上
本記事の内容は、執筆時点での情報に基づいています。探偵業法や関連法規の改正により、内容が変更される場合があります。実際に探偵サービスをご利用の際は、最新の法令に基づいた適切な業者をお選びください。